Jeff Beckとソウル・R&B。
ジェフとこれらの音楽は一見関わりが薄いように思えるかもしれません。
ジェフの数多くの作品の中でも別格といっても差し支えないであろう存在感を誇る2枚のアルバム、Blow By BlowとWired。
ロックとジャズの融合を高らかに宣言したこのアルバム達はまぎれもない名盤。
そしてジェフのインスト、フュージョンというイメージを形作るものとなりました。
そのイメージは確かにジェフを言い当てているには違いありませんが、同時にジェフのソウル好きな側面をちょっと隠してしまっている感があると僕は思います。
隠してしまっているのは別に構わないし、そもそもそういうカテゴライズも要らないと思いますが、それゆえに見過ごされてしまっているジェフの名盤や側面があるのは大いに勿体無いと思うので今回はそれについて書きたいのです。
そのアルバムとは第2期Jeff Beck Groupの2枚目、”Jeff Beck Group”
通称オレンジアルバムと呼ばれるアルバムです。
先の大名盤2枚やBBAなどを聴いている人は多いです。
でもこのオレンジアルバムを聴いている人は意外に少ない感じます。
このアルバムはジェフのソウル好きな一面が大きくプッシュされた一枚であり、ここでしか味わえないジェフの一面が見られるものです。

スティービーワンダーの曲をよくカバーしたり、ゲストでソロを弾いたりとジェフは元来本当にソウルが好きなのだと思います。
その証拠にこのアルバムのプロデューサーはそのソウルサウンドを作り上げた張本人の一人、スティーブ・クロッパー。
オレンジアルバムは彼のプロデュースのもとソウルフルなボーカル、Bob Tenchをフィーチャーした本格的なソウルアルバムとなっているのです。
スティービーワンダーのカバー、I Got to Have a Songでの本格的なモータウングルーヴとメロディックで小気味いいリズムギター。
コードプレイとオブリガードを巧みに織り交ぜたプレイはジェフの他のアルバムでは聴けないのでは?
Tonight I'll Be Staying Here With Youはディランのカバー。
ディランのフォークソングがソウルフルに生まれ変わっていて味わい深いです。
ジェフによる書き下ろしのHighways
ボーカルと密に絡むリリカルなギター伴奏が秀逸。
ジェフらしいトリッキーなフレーズもありながら抑制を効かせてボーカルに寄り添い、じわじわと曲の熱を高めて行きます。
それと好対照を為す熱いギターソロも聴き処。
マックス・ミドルトンのエレピ、コージー・パウエルの熱いドラムなど聴き処は満載だけれども、敢えてジェフだけに焦点を絞ると、いずれの曲にしても伴奏のギターが素晴らしい。
歌のバックで好き勝手弾きまくってロッド・スチュワートをキレさせたのと同じ人物が弾いているとはとてもじゃないが思えません。
そいう意味でもジェフのもう一つの側面が見えるのではないでしょうか。
ここまで伴奏伴奏と書いて置いてなんですが最後を締めくくるのはインスト曲のDefinitely Maybe。
聴いたことのない方はぜひ聴いてみて欲しいです。
スライドバーとワウペダルによって演奏されるこの曲はエレクトリックギターの表現の極みの一つだと思う。
デュアン・オールマン、ジェシ・エド・デイビス、ジョージ・ハリスンなど名手揃いの生であまり注目さえれていない感があるがジェフのスライドはとても深いものがあると思います。
またこの曲でのワウの使いかたがとてもロマンチックで素晴らしい。
サイケなサウンドではないリリカルな表現でのワウというものを教えてくれるような演奏ではないでしょうか。
ワウの使い手といえばジミでもワーワー・ワトソンでもなくジェフと言ってしまいたくなります。
かの哀しみの恋人たちに負けず劣らずの名曲、名演のバラードだと僕は思います。
ジェフの一味違った魅力に満ちたこの「Jeff Beck Group/オレンジアルバム」ぜひ一度きいてみてください!