2017年1月18日水曜日

Here,There And Everywhere レコーディング機材史に残る発明品によって録音された珠玉の声

ビートルズのバラードのなかでも特に人気の高い、 Here,There And Everywhere。
ビートルズのなかでも一番すき、という人も多い珠玉の名曲。

実はこの曲の完成には、ある革命的なレコーディング機材の発明が大きく寄与しています。
まあレコーディング黎明期の60年代、当時生まれた技術や機材はどれも革命的ではあったんですが…とにかくすごい時代です。
ともあれその発明品とはなにかというとコンデンサーマイク。

コンデンサーマイクとはなにかを簡単に言うと声や楽器の音である空気振動を電気的なセンサーによって受け止め信号に変えるマイクです。
それまでのマイクはダイナミックマイクといって空気振動を振動板で物理的に受け止めて電磁誘導によって信号を生成するものです。


このコンデンサーマイクの発明によってマイクの感度や解像度が段違いに向上しました。
つまり小さな音でもでもしっかり拾うことができる、演奏の細かな所まで聴こえる音で録音できるということです。


さて美しいメロディーにみを任せて聴いてしまうこのHere,There And Everywhere。
少し意識してポールの歌い方に耳を傾けてみると、とても優しいささやくような声で歌っているのに気づいて頂けると思います。
いわゆるウィスパーボイスというやつです。

ダイナミックマイクだと声をしっかり出さないとうまく拾ってくれない、あるいは録音できたとしても良い歌声として記録することができないという状態でした。
それがコンデンサーマイクの登場で声量を気にせずニュアンスや雰囲気を優先したボーカルを録音することが可能になったんですね。
このポールの繊細な歌声があってのHere,There And Everywhereという名曲だと思います。

いまのマイクはすべてコンデンサーというわけではなくダイナミックマイクも多く使われています。
コンデンサーは高価であること、感度が良すぎてライブ演奏では勝手が悪いことからライブハウスに常設してあるマイクはだいたいダイナミックです。

ビートルズの曲を披露するハコバンの仕事をしている知り合いの方が言っていた話です。
現場のダイナミックマイクではしっかり声を出さないとバンドの音に埋もれてお客さんに届かない。
しかし声を張るとこの曲の雰囲気がでないので本当にいい拍手をもらうのが難しいとのこと。
ビートルズの完コピを目指す業界ならではだなあと思います。

そんなレコーディング史に残る発明に支えられた名曲Here,There And Everywhere。
ぜひポールの声そのものに耳を傾けて今一度聴いてみてください!