2017年1月22日日曜日

ロンサムに生き続けたブルーズマン、Sonny Boy Williamson Ⅱ

Editor : Yosuke Hayashimoto

変幻自在のブルースハープとロンサムな歌声でブルーズの歴史に名を残すレジェンド、サニーボーイ•ウィリアムスンⅡ。
Ⅱは二世ではなく「ツー」と読む。

なぜ「ツー」かというとサニーボーイ•ウィリアムスンは二人いるから。
しかもたまたま同性同名なのではなく、Ⅱが名前を騙っているのだ。


こう聞くと素っ頓狂な風貌や語り口と相まってとてもインチキくさい人に見えるかもしれない。
かといって真っ当な人間だったかというとそれも肯定しづらいのだが….

しかしながら彼の歌うブルーズは紛れもなく本物。
マディやウルフのようなパワーに満ちたブルーズとはまた違う、どこか冗談めいたおかしみがあって、それでいて孤独や悲しみを纏っている。
その声にブルースハープが色を添える。


サニーボーイで忘れてはならないのがやはりハープ。
音色を自由自在に扱い、まるでもう一つの声のように、時に喋るように、ときに咽び鳴らように鳴らされるハープ。
縦にくわえて吹いたり鼻で吹いたりするのも欠かせない彼の芸の一つ。

彼の本名はアレック•ミラー。
なぜ名前を騙ったのかは謎のままである。
当然本物のサニーボーイから文句がつく。
しかし一貫して自分が本物だと言い張ったらしい。
裁判になっても法廷で自分が本物だと言って通したらしいので見上げたものだ。

それとは裏腹に結構いい人のエピソードが多い。
ロバート•ジョンソンに渡された毒入りウイスキーを「栓が空けられた瓶なんて飲むもんじゃねえ」といって制したり、(結局ロバジョンは無視して飲んで死んでしまうが)
ジェイムス•コットンにハープを教えたのは彼
リトル•ウォルターと比較に悩む彼をしきりに励ましたりしたらしい。

彼のブルーズとこうしたエピソードを聴く限り、僕は彼が名前を騙ったおかしな人とは思えない。
CDを聴きながら彼が名前を騙った理由を想像してみる。
過去の自分や生い立ちが嫌いでそれらと決別するため?
好きで好きでしょうがなかった自分を振った女がサニーボーイⅠを好きといったからとか?
ブルーズマンのことだからやっぱり女絡みなんじゃないかと思ったり。
南部やシカゴでの彼をそうやって想像してみる。

一見すると面白い彼のエピソードやパフォーマンスは、彼自身が抱える消すことのできない「ブルーズ」をなんとか隠して景気づけしているように思う。
でもそのベールは隙間だらけで、ハープから吐息が漏れるように彼のブルーズはどうしても見え隠れしてしまう。
それがなんともロンサムでディープなことか!